魅惑のヴァンパイア
そんな日々が一年程続き、ある満月の夜、わらわと王は結ばれた。


ヴァンパイアと人間が身体を重ねるなど当時はあってはならないことだった。


 人間はあくまで食べ物。家畜と性交するようなものだ。


 しかし、わらわと王は心底愛し合っておった。


 周りからどんなに批判されても、王はわらわを庇ってくれた。


 だが、悪名高い大臣の娘を王の后にという策略で、わらわと王の穏やかな愛の日々は崩れ去った。


 王が人間と関係を持っているという噂が民にまで広まり、いくら王とはいえ、これ以上わらわを守りきれなくなった。


 そしてわらわは自分の命と引き換えに、唯一の願いを聞いてもらえることになった。


 わらわの願いは、人間とヴァンパイアの間でも真に愛しあえば子供ができるようにしてほしい、そう願ったのじゃ。


 そしてわらわは子を宿すことができ、わらわは子を産むと同時に息絶えた。


 悲しみにくれた王は、わらわを神殿に祀り弔った。


 その想いは神に届き、そのおかげでわらわはここで、死界を司る女神となることができたのじゃ』
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