魅惑のヴァンパイア
「あっ……待って」


 私はバリアから出て、ベネチアンマスクを追いかけた。


 ……ヴラド。待って。


 風に揺れるベネチアンマスクが、地面に落ちて止まった。


早くしないとまた飛んでいってしまうかもしれない。


私は急いで駆け出した。


 風に揺れて、また飛んでいこうとしていた所に、ギリギリで手が届いた。


地面に座り込み、マスクをしっかりと胸に抱いた。


 ……良かった。


「シャオン様っ!」


 バドの切羽詰まった声で、ハッと我に返り顔を上げると、私の頭の上では、武装した兵士が刃を振り上げていた。


 剥きだしの白刃は、月の光のようにキラリと光った。
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