魅惑のヴァンパイア
至る所で男達の悲鳴にも似た叫び声がしていた。


 目の前で沢山の人が死んでいく……。


目を逸らすこともできない程、視界全体で戦争が行われていた。


何もできない歯がゆさと、恐怖で震える身体は、バドの後ろ姿を見ると少しだけ安心した。


「これは……まずいですね」


 バドがぼそっと呟いた。


黒騎士団と一人で戦っていたラシードの戦況は辛くも押さえ込んでいるという状況で、倒すには程遠く、戦闘が長引けば綻びが出て、黒騎士団が野放しにされてしまう。


 一人でも野放しになってしまったら、その影響が与える力は凄まじく、闇の結社達の多くが死んでしまうことになりそうだった。


 竜巻が起き、兵士達をなぎ倒す。


 しかしすぐにうじ虫のように後ろから兵士が出てくる。


 無数に存在する駒は、ナイトをも呑み込んでしまう勢いだった。
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