魅惑のヴァンパイア
バドに追いすがろうとした私を、ピーターは抱きかかえた。


「子猫ちゃん。絶対に動かないでくれよ。一か八かの賭けなんだ」


賭けってなに? 


どういうこと。


どうしてバドはこんな寂しそうな表情をしてるの?


「バド……ねぇ! 何か言ってよ! また、会えるんでしょ? ねぇ!」


すぐに会えるって言って。そんな死にに行くような顔をしないで。


「お気をつけて……」


この言葉で確信した。


バドは死ぬ気だ。


私を逃がして、死ぬ気なんだ。


「やだ! やだ! 行かないから! バドが一緒じゃなきゃ私行かないから! 私を独りにしないで!」


ピーターに身体を抑えつけられながら、叫ぶ私に、バドはゆっくりと近づいた。


泣いている私の涙を、そっと指の腹で拭い、私の頬を愛おしそうに撫でた。
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