魅惑のヴァンパイア
「ここはどこなんですか?」


「さぁね~どこだろね~」


「え?」


「遠くへ遠くへって念じただけだったから」


 頭にかかっていた靄が一瞬で晴れるように、バド達のことを思い出した。


「そうだ! バドは……皆は大丈夫ですか!?」


 ピーターは突然真顔になり、言葉を噤んだ。


「あの……」


「おいで」


 ピーターはスっと立ち上がり森の中を歩き出した。


 慌てて私も立ち上がり、後を追う。


 ピーターは何も言わず、ただどんどんと進んでいく。


 その後ろ姿を見ていると、何も話しかけられなかった。


ピーターの歩みが止まり、前を見てみると、森が切られ崖になっていた。


 朝日が眩しい。


 世界を見渡せる絶景だった。


 ピーターは何も言わず、指をさした。
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