魅惑のヴァンパイア
最期に見た、優しい微笑み。


 まだおでこに感じる、柔らかな唇の感触。


 涙がつーっと頬を伝った。


息が詰まって死んでしまいそうだった。


ガクンと膝が崩れ落ちた。


全てがなくなってしまった跡地。


死体さえも転がっていない。


全てがなくなってしまった。


私はどうして生きているんだろう。


私の命にどれ程の価値があるのだろうか。


助けに来てくれた人達。


金髪のあの綺麗な顔をした人も死んでしまったのだろうか。


私なんかを守るために。


罪もない優しい人達が死んでしまった……。


「子猫ちゃん……」


 ピーターは憐れむように私を見下ろした。


 けれど次の言葉が出てこない。


 ピーターもショックを受けているのだ。


 私と、同じように……。
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