魅惑のヴァンパイア
「子猫ちゃんしっかりしろ。歩けるか?」


 ピーターが放心状態になっている私を気遣い、手を差し伸べた。


 ラシードや、他の者達も心配そうな顔でこちらを見ていた。


 ……しっかりしなくちゃ。


 皆、大変だったんだ。


バド以外にも味方は沢山死んだ。


 ショックなのは私だけじゃないんだ。


 今ここで倒れちゃいけない。


泣いてちゃいけない。


 今はまだ……。


そう、今はまだ……。


 顔を上げて、ピーターの瞳を捉えた。


「大丈夫」


 震える手をぎゅっと握って、凛とした声で言った。


 ピーターとラシードは一瞬驚いた顔をしてから、ふっと笑った。


「強い姫君だ」
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