魅惑のヴァンパイア
大きな声で呼びかけられ、皆の視線が一斉に私に集まる。


恥ずかしくなって、逃げ出しくなった。


でも、ここで逃げるなんて失礼だ。


私はスカートの裾を両手で握りしめながら、おずおずと進み出た。


 皆が笑顔で迎えてくれる。


私の緊張も、その笑顔でほっと安らいだ。


「何をしてるんですか?」


私は思い切って、声を掛けてくれたおばさんに聞いてみた。


「洗濯です。男共はすぐ汚しますからね。毎日洗ってもおっつかないんですよ」


「私も……、手伝いましょうか?」


「そんなめっそうもありません! シャオン様はそんなことしなくていいんですよ。これは私らの仕事ですから」


「でも……」


 言い淀んでいると、スカートの裾をくいくいっと引っ張られた。


下を見ると、5、6歳くらいの女の子が私の顔をじっと見上げていた。


「なぁに? どうしたの?」


 笑顔を向けて聞くと、女の子は心配そうな顔で言った。


「どうしてお姉ちゃんの目は赤いの? 泣いてたの?」


 女の子の言葉に、辺りが一瞬しんとなった。


「これっ! そんなこと言うもんじゃないよ!」


 女の子のお母さんなのか、近くにいた女の人が慌てて女の子を引き寄せた。
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