魅惑のヴァンパイア
「だって、ねねもいっぱい泣くと、ああいう目になるよ。だからお姉ちゃんも一緒なのかと思ったんだもん」


「こらっ!」


「なんで? 川の冷たい水でお顔を洗うと、すぐ直るんだよ。ねね、教えてあげようと思ったんだもん」


 子供は何も悪いことをしていないだけに、お母さんは、何と言えば子供に伝わるだろうと頭を巡らせているようで、困り果てた表情をしていた。


「ねねちゃんって言うんだ」


 私は子供の目の高さに合わせるように腰を屈めた。


「うん!」


「教えてくれてありがとう。ねねちゃんが言ってた川の水で、顔を洗ってくるね。川はどこにあるのかな?」


「あっちだよ。ねねが連れてってあげる」


 ねねちゃんは、得意そうに微笑むと私の手を引っ張って、指さした方向に歩き出した。


「すみません、ねねちゃんお借りしてもいいですか?」


「え、ええ。それはいいんですけど……」


「ありがとうございます。じゃあ、ねねちゃん行こっか」
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