魅惑のヴァンパイア
 お辞儀をして、ねねちゃんに引っ張られるままに歩き出した。


すると、ハッと気付いたねねちゃんのお母さんが、


「ねね! シャオン様の手を引っ張るんじゃないよ! シャオン様のお腹には赤ちゃんがいるんだから!」

と後ろから叫んだ。


 ねねちゃんは驚いて、手を離した。


「お姉ちゃんのお腹、赤ちゃんいるの?」


「そうだよ。だからゆっくり手を繋いで歩こうか」


 今度は私がねねちゃんの手を取って歩き出した。


ねねちゃんは、嬉しそうに繋いだ手をぎゅっと握り返した。


「赤ちゃん、可愛いねぇ」


 ねねちゃんは、うっとりと目を細めた。


ほんの数年前までは、ねねちゃんも赤ちゃんだったのに、そんなことを言うなんて、女の子は何歳であろうと母性本能があるんだなぁと思うと、なんだか可笑しかった。


「可愛いだろうね」


 私もお腹をさすって、微笑んだ。

< 325 / 431 >

この作品をシェア

pagetop