魅惑のヴァンパイア
川は、塔から歩いて五分くらいの場所にあった。


水が透き通っていて、川底まではっきり見える。


自然の山水なのだろう、手を入れるとひんやり冷たかった。


「穏やかで、澄んでいて、とても素敵な所だね」


「お水も飲めるんだよ!」


 ねねちゃんは、小さな手で器用に川の水を掬うとゴクゴク飲み始めた。


 私は川に顔を近付けてみた。


鏡のように、川面に自分の顔が写った。


酷い顔をしている。


ねねちゃんの言う通り、目は赤いし、瞼が少し腫れている。


誰が見ても、一目で一晩中泣いていたことが分かる顔だった。


 私は川の水を掬って、勢いよく顔にかけた。


すごく冷たい。


 けれど、何回も冷たい水で顔を洗った。


すると、頭もすっきりとしてくる。


「はあ~、気持ちいい」


 川辺に横たわり、太陽を見上げる。


目を閉じると、川のせせらぎと、小鳥の鳴き声が聴こえる。


大きく深呼吸をすると、身体の中まで綺麗な空気が行き渡って、毒素が抜けていくようだった。
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