魅惑のヴァンパイア
こんな小さな子供から、そうやって生きているなんて言葉が出てくるとは思わなかった。


こんな小さな子供から、励まされるなんて……。


「ねねちゃんも辛かったんだね。ありがとう」


 私はねねちゃんを抱きしめた。


自分の辛さがちっぽけに感じた。


 皆、痛みを背負って生きている。


こんな小さな子でも。あんなに明るく見えた人達でも。


 身体に抱えきれないほどの、寂しさと悲しみを秘めながら、太陽の下では明るく元気に振る舞っているんだ。


そうやって、生きているんだ。


 生きるって、そういうことなんだ。


 もっと強くなりたい。


守られるだけじゃなくて、守る存在になりたい。


内気な自分、卑屈な自分を変えたい。


愛する人を守れる自分になりたい。


 私は、お腹の子を守る。


ヴラドと愛し合って授かったこの子を守る。


 お母さんが、弱虫だったら子供が笑えなくなる。


ねねちゃんのお母さん達みたいに、力強く生きたい。


「ねねちゃん、ありがとう。お姉ちゃん、これから頑張れそうだよ」


 ねねちゃんはとびきりの笑顔を見せた。


痛みを知る者は、その分、優しくなれる。


強くなれる。


 大丈夫、私は変われる。


だって、お母さんになるんだから。
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