魅惑のヴァンパイア
*  *  *


「私にも手伝わせてくださいっ!」


 川から帰ってくるなり頼み込んだシャオンに、女達は困惑の色を浮かべた。


「気持ちは嬉しいんですけど、シャオン様に手伝わせるわけには……」


「どうしてですか? 私もここに住んでいる以上、特別扱いはなしですよ。それに様はやめてください。お姫様じゃあるまいし」


 カラカラと笑うシャオンに、女たちは目を合わせた。


王の寵愛する女性なのだから、女達から見れば正妃と変わらないのだが、当の本人はてんで理解していないらしい。


「でもねぇ。お腹の子に何かあったら……」


 女たちが断る理由を探していると、森の奥から声がした。


「母体と子のためにも、適度な運動は大切じゃよ」


 聞き慣れた声だった。


声の主を探すと、木の上に置物のように乗っている小さな老婆がいた。
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