魅惑のヴァンパイア
ラシードは窓から楽しげに笑うシャオンの姿を見つけた。


お腹は大分大きくなり、女達と一緒に洗濯をしていた。


人間界では、洗濯の際は機械を使ってやるらしい。


力の持たない人間ならではの発想だ。


魔力のあるヴァンパイアは、機械など使わなくても、一瞬で綺麗にできる。


しかし、ヴァンパイアにも魔力の差はあり、大抵のヴァンパイアは、家事で毎回魔力を使っていたら、体力を消耗し疲れ果ててしまう。


コクーンにいたっては、魔力を使える者はほんの僅かだ。


力や能力がある者は、弱者のことは考えない。


ゆえに、どんどん格差が広がっていく。


 ラシードは、そんな魔界の仕組みが嫌だった。


だから力のない者たちも、便利で楽に暮らせるように、研究や開発を始めたのだった。


 しかも、研究や開発といっても、ヴァンパイアは魔力が使えるので、本気になれば人間界では作られていない物を作り出すことも容易だった。


今までは、そんなことを考えたり、作ったりする魔力の強いヴァンパイアがいなかったのだ。


薬や機械を作るくらいなら、魔力を高めればいい話だった。


または、治癒能力や、物を生み出せるヴァンパイアを探せばいいことだった。


 ラシードの取り組みは、まだ始まったばかりだった。

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