魅惑のヴァンパイア
バドが死んで、一時はどうなることかと心配していたが、シャオンは積極的に交友を広げていた。


 最初は戸惑っていた女達も、今ではお腹の負担にならない程度なら手伝いを許し、いつの間にか敬語もなくなり、あっという間に溶け込んでしまっていた。


 ……なんとも不思議で、魅力的な女性だな。


 ラシードは目を細め、微笑ましくその光景を眺めていた。


 ラシードはまだ言えなかった。


あの戦争の後、ルースカが血相を変えて伝えに来た日の内容を。


 あんなに明るく気丈に振舞っているシャオンが、夜中になると寝室からすすり泣く声が聴こえるという噂が、事実をより一層言えなくしていた。


 ……もしもあの事を言ってしまったら、シャオン様はどうなってしまうのだろう。


 あの小さな身体で、事実を受け止めるには重すぎる。
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