魅惑のヴァンパイア
――――……


漆黒の闇の世界が広がっていた。


ヘドロのように、ぬったりとした不気味な闇だった。


闇の中を、空を飛ぶように漂っていると、遠くの方に人の姿が見えた。


流れるようなマントに、銀色の髪。蒼色の瞳が、闇に美しく光っていた。


……ヴラドっ!


幽霊のように実体なく闇を漂っていた私は、ヴラドの姿を見つけると、心が躍った。


嬉しくて嬉しくて仕方がない。


けれど、実体がないので、声を出すことができなかった。


ヴラドは私が見えないのか、気が付かないのか、私とは反対の方向を睨むように見つめていた。


その手には、立派な剣が握られていた。


何者かと対峙しているらしく、その表情は殺気立っていた。


すると突然、闇の中から黒い物体が現れた。


その物体は固形と液体の中間のようにドロリとしており、ヴラドを頭から飲み込もうとしていた。
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