魅惑のヴァンパイア
足が自然と塔の最上階へと向かっていた。


秘密結社の作戦本部。


 ここに来れば、ラシードに会えるかなと思った。


ラシードに会って、夢のことを話せば、「大丈夫ですよ、全ては上手くいっています」と明るい言葉が返ってくるのを期待していた。



「無茶です! 会えるか分からないというのに!」
「しかもこれは試作品です。下手すれば命を落としかねません!」



 本部の部屋からは、結社たちの声が漏れていた。


その声の様子に、ただならぬものを感じた。


 どうしたんだろう。何かあったのかな。


 私は、部屋をノックしようとしていた手を止めて、扉に耳をそばだてた。


「王妃が自殺したからといって、何を心配することがあるんですか。最大の敵がいなくなって良かったではないですか」


「しかし、嫌な予感がするんだ。それに、ヴラド様の身体がなくなってもう十日も過ぎている」
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