魅惑のヴァンパイア
「……分かりました」


 考え込みながら黙っていたラシードが口を開いた。


「死界へは、シャオン様に行ってもらいましょう」


「「ラシード様!?」」


結社の人達は、皆一様に声を上げた。


正気か!?と疑うような目でラシードを見ている。


「私が行くより、シャオン様が行った方がヴラド様に会えるかもしれない。

死界は想像を超えるほど広い場所。

そんな場所で、目的の人物に会える可能性は限りなく低いが、求め合う絆の力があれば、もしかすると……」


「しかし、ラシード様。死界は長い時間いると、精神がやられて魂が死んでしまうと云われます。シャオン様に耐えきれるでしょうか」


「ヴラドの為だったら、何がなんでも耐えてみせる!」


 私は結社の人に食いかかった。その勢いに、結社の人達は困り果て、ラシードは笑顔を見せた。


「頼もしいですね。しかし、24時間経ったら、問答無用で宝石を吐き出させ、魔界に戻させます。

これは試作品ですから、長い時間胃の中に入れておくと魔力が溶け出し大変危険なのです。

いいですか、24時間がタイムリミットです。

その短時間でヴラド様と会い、無事を確かめてきてください」


 答えはもちろんイエスだった。


考えるまでもない。


私は力強く頷いた。
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