魅惑のヴァンパイア
ラシードは、倒れ込んだシャオンの身体を支えた。
もう行ってしまった。なんの迷いもなしに。
「普通の女の子なら、死界とか怨霊とか聞いたら震えあがるんじゃないんですかね」
結社の一人が、眠っているシャオンの顔を覗き込みながら言った。
「それほど強い覚悟だったんだろう」
ラシードは、苦笑いしながら言った。
本当は自分が行きたかった。
この役目を果たすのは、自分しかいないと思っていた。
しかし、シャオンとヴラドの絆の強さには敵わない。
本当は少し、悔しかった。
何もできない自分の不甲斐なさが。
……この二人に懸けてみよう。
二人の絆を信じるんだ。
ラシードは、眠るシャオンの顔を見ながら心に誓った。