魅惑のヴァンパイア
*  *  *


これは、夢の続き?


 気が付いたら、一面、真っ暗な世界にいた。


上も下も、右も左も、どこまでも深い闇だった。


宇宙から星々を消して、そこに漂っているような、無限に続く漆黒の世界だ。


 ラシードから貰ったペンライトを握りしめ、明かりを灯してみたけれど、蝋燭の火ほどの小さな光が灯るだけで、何も映してはくれない。


たぶん、何もないのだろう。


 一歩、足を踏みだしてみた。


歩いているのか、飛んでいるのか分からない。


なんだか凄く、不安になって足がすくんでしまった。


立ち止まっちゃダメだ。


震える両足に喝を入れて、歩き出した。


《……シャオン》


声が聞こえた気がした。


ヴラドが私を呼んでいる。


私は辺りを見渡して、ヴラドの姿を探した。


けれど、ヴラドの姿はどこにもなかった。


ヴラドはもっと遠い所にいる。


そこから私を呼んでいる。
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