魅惑のヴァンパイア
しかも奴らは、どうやらヴラドが気に入らないらしい。


ことあるごとに、ヴラドを狙って襲ってくる。


死界の女神から受け取った剣がなければ、危ない所だった。


 なぜ奴らはヴラドを狙うのか。


今の所、襲ってくるのは小者なので大したことはないが、それより気になるのは、ヴラドを飲み込み、こちらへ連れてきた不気味な物体だ。


その物体は、ヴラドを闇の中からじっと見つめ、機会を伺っているようだった。


 何を待っているのか。


どうして今すぐ対峙しないのか。


ヴラドは、執念深い女のような視線に、だんだん苛々が隠せなくなってきていた。


 しかも、元いた場所に戻ろうにも、どちらの方角に向かえばいいのかも分からない。


早く帰らなければと焦りだけが積もっていく。


 ……シャオン。


 胸の中で、何度も名前を呼ぶ。


 早く会いたい。


会って抱きしめたい。


 その為には、こんな所で道草を食っている場合じゃないんだ。


 ヴラドは、がむしゃらに走り出した。


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