魅惑のヴァンパイア
*  *  *


身体中にまとわりつく、嫌な気配。


奥に進めば進むほど、空気がよどみ、重くなっていくようだった。


 私は足元を照らしながら、一歩一歩確かめるように歩いていた。


足元を照らしても、そこに広がるのはただの暗闇だった。


地面を歩いているのか、空のような所を歩いているのか、それすら分からない無限に広がる闇。


 いつ、どこから何かが出てきてもおかしくない雰囲気。


 怖すぎて、頭がおかしくなりそうだった。


 ヴラド、ヴラド……。


 お祓いの呪文のように、心の中で名前を繰り返し呼んだ。


そうしていないと、恐怖で一歩も歩けなくなりそうだった。


 耳鳴りのような、頭の奥がキーンとする嫌な気配を感じた。


 その時、足下の闇が水面のように揺れて、小さな波紋が浮かんだと思ったら、そこから突然黒い手が現れて、私の足首をギュッと掴んだ。
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