魅惑のヴァンパイア
「まあ、無事ヴラド様に会えて、帰ってこれたのだからいいでしょう」


 ラシードはにこやかに微笑んだ。


「ごめんなさい」


「いいえ、いいんです。ヴラド様なら、しっかりと死の呪いを解いて帰ってきてくれるでしょう。ヴラド様はお元気でしたか?」


「元気だったけど、色々大変だったの。王妃の怨霊が襲ってきたりして」


「自殺した王妃が!?」


「そうなの。ヴラドは死界の怨霊たちが住む危険な場所に迷い込んでいて……」


私は死界で体験したことを全て語り出した。


語り終えると、ラシード達は、それは大変だったと口ぐちに言い、私の頑張りを称賛してくれた。


 こんなに褒められたことは今までなかったので、なんだか照れ臭かった。


ただ、ヴラドに会いたくて。


ヴラドを助けたかった一心だったから。


さっきまでヴラドと一緒だったのに、もう会いたくなっていた。


ヴラド、大丈夫かな。無事に帰ってこれるかな。


心配は尽きないけれど、ラシードの言う通り、ヴラドを信じて待っていよう。


いつ帰ってくるかも分からないけれど。寂しさに負けてしまいそうになるけれど。


ヴラドを信じて。


 お腹の子と一緒に、ヴラドの帰りを待ってる。


いつまでも。
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