魅惑のヴァンパイア
†第八章† 人間界

戻り人

 爽やかな朝の風が頬を揺らした。


 指先を小川に付けると、小さな波ができた。


 冷たい水の感触。


暖かな日差し。


「んん~~」


 背筋を伸ばすと、お腹の内側からドンっと蹴られた。


「今日も元気ね~あなたは」


 毎日何度話しかけているだろう。


 顔を見られるかどうかも分からない最愛の子に。


 抱きしめてあげることができないかもしれないから、何度もお腹を撫でる。


 言葉を交わすことができないかもしれないから、何度も伝える。


 愛していると。
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