魅惑のヴァンパイア
「あ、あのっ! 外に……出たいんですけどっ!」


ヴラドとは違って、優しそうな雰囲気だったので、思い切って言ってみた。


逃げたい、とはさすがに言えず、言葉を濁らせてみた。


バドという執事は、にっこりと微笑むと、


「あなたが外に出たいと思えば、いつでも出られるはずですよ?」と言った。


いつでも?


「で、でもっ! 出ようとしたら鍵がかかっていて開かなくて」


 壊そうと思ったけど壊せなくて、ということはさすがに言えなかった。


「鍵なんてかけていません」


「え? でも……」


「逃げようと思うから……出られないのです」 


バドは口元に微笑みを蓄えたまま、細い切れ長の目をほんの少し開け、私の瞳を真っ直ぐに見つめた。


ゾっと悪寒が走った。


優しいと思っていたのは、表の顔だ。


裏の顔は、とてつもなく恐い。
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