魅惑のヴァンパイア
「いや、俺はしばらくヴァンパイアになるつもりはないんだ」


「なぜですか!?」


「なぜって……」


 その時だった。


 固く閉められた扉の奥から、元気に泣く赤ん坊の声がした。


「シャオンっ!」


ヴラドはドアを強く叩いた。


元気に泣く赤ん坊の声に、皆が頬を高揚させ感嘆の声をあげた。


「待て待て待てぃ」


 ヴラドが余りにも強くドアを連打するので、慌てたゲン婆さんが扉の奥から声を出した。


「シャオンは無事かっ!?」


 ドアにべったりと張り付いて、中の様子を探ろうとするヴラド。


「だから待てと言っておるに」


呆れたような声。


それでも声に喜びの色が感じられた。


「まだ中には入っちゃいけないのか!?」


「全く仕方のない奴だ。出産の場に男を入れる人間界とは違うのだぞ? 出産は女の神聖な儀式。片付くまで待たんか」


「俺は人間になったんだ! だから入れてくれ!」


その声に中が一瞬シンとなってから、ガチャリとドアが数センチ開いた。
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