魅惑のヴァンパイア
「シャオン……」


「泣いてるの? ヴラド」


「馬鹿なことを言うな!」


 必死に否定はしていたが、ヴラドの目は赤く充血していた。


強がるヴラドを、温かい微笑みで見つめるシャオン。


 疲れ果てているようではあるが、すっかり母親の顔をしていた。


「大丈夫か? 痛くはなかったか?」


「ふふ。痛かったよ、とっても。でも大丈夫。

私、生きてる」


 ヴラドはぶわっと瞳が熱くなるのを感じて、慌てて顔を上げた。


 小さな赤ん坊は、不思議そうにヴラドの様子を見ていた。


まだ頭の毛が殆ど生えておらず、猿のようにも見えるが、瞳が大きな可愛らしい赤ん坊だった。


「のう、なぜその赤ん坊からは力が感じられないのじゃ?」


 ヴラドの身長の三分の一くらいしかないゲン婆さんが言った。


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