魅惑のヴァンパイア
「逃げようと思わなければ、いつでも出られますよ」


再び元の優しい笑顔に戻った。


逃げようと思わなければ……。


どういう意味だろう。


どうすれば私は家に帰れるのだろう。


「それでは」 


バドは、礼儀正しくお辞儀をして、出て行こうとした。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


まだ聞きたいことは山ほどある。


バドはゆっくりと振り返った。


「ここは……どこなんですか?」


「ここはヴラド様の屋敷でございます」


「いや、そういうことじゃなくて……えっと……不思議な生き物とか沢山いたんですけど……えっと……」


なんて説明したらいいか分からなかった。


何が正常で、何が正常じゃないかも分からないくらい、全てが不思議なことだらけだった。


困っている私に、バドは優しく微笑むと、


「ここは人間界ではありませんよ。ここは魔界です」


「魔界?」


「詳しく説明しても理解できないでしょう。理解する必要もないことです」
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