魅惑のヴァンパイア
「だぁっ!! なんで人間界はこんなに天井が低いんだっ!」


「だから人間界が低いんじゃなくて、日本の天井が低いんだよ。日本人はヴラドみたいにそんなに身長が高い人少ないんだもん」


「研究所でも頭をぶつけるぞ。俺のおでこは年中タンコブだらけだ」


「じゃあ撮影の時、何か言われない?」


「前髪で隠しているからな。撮影の時は影響ないさ。ただ、メイクされている時におでこを見せる度笑われるのが腹立つ」


 いつも自信ありげで澄ましているのに、おでこにタンコブだらけでメイクさんに笑われているヴラド……。


 想像しただけで笑っちゃう。ぷぷ。


「おい、今笑っただろ?」


「ま、まさか! 笑ってないよっ!」


「真央は嘘をつく時いつも目が泳ぐ。笑った罰を与えなきゃな」


「ば……罰?」


 やばい。意地悪そうな微笑み。


 こんな表情をする時はいつも、エッチなこと考えている時だ。


 壁に手をついて、私が逃げられないようにするヴラド。


 ジリジリとたっぷり時間をかけて近付いてくる。


 端整な顔立ちと、思わず見惚れてしまう蒼い瞳。


 人間界であまり目立たないようにと、銀髪から艶やかな黒に染めた髪の毛。


 漆黒の髪に、蒼い瞳は不気味な程妖しく色っぽくて……。


 結婚して五年も経つのに、私はいまだにドキドキしている。
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