魅惑のヴァンパイア
その言葉は暗に、これ以上聞くなと言われている気がした。


優しい微笑みが、逆に怖い。


それでも聞かずにはいられなかった。


「じゃあ……あの、あなた達は、魔法使いなんですか?」


バドは、ふっと鼻で笑った。


魔法使い、なんて言葉にするのも恥ずかしいけれど、ヴラドやバドの言動は魔法使いという表現でしか表せなかった。


「いいえ、私達は……ヴァンパイアです」


バドの口から長く鋭利な犬歯が見えた。


その瞬間、身体が凍りついたように固まった。


……ヴァンパイア? ウソ……。


襟を立てた、足首まで届く漆黒のマント。


蒼い瞳。


人間とは思えない程、整った顔立ち。


ヴラドの顔を頭に描いた。


あの人は……人間ではなかったの?


――嫌いになったはずなのに、なぜか胸がぎゅっと締め付けられた。
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