魅惑のヴァンパイア
それから、何も知らない、何も見ていなかったふりをして怜央に声をかけた。


(もちろん勝手に外に遊びに出て行ったことは怒ったよ)


家事の合間に、心配だからチラチラ怜央を見ていたけど、今から心配していたってキリがないと思って考えないことにした。


 怜央が寝静まって、寝顔を見ていると、生意気でマセガキとは思えないくらい、天使のような可愛らしい笑顔だった。


 柔らかな雪のような白い肌に、血を舐めた後のような紅い唇。


 彫の深い目鼻立ちには、長い睫毛が影を作っている。


艶やかな黒髪は、首筋を隠す程度に切られていて、清漣な川のようにサラサラと流れていた。


「本当……可愛いなぁ」


 ぼそっと言葉に出てしまう。


 愛しくて、愛しくてたまらない、私達の宝物。


どうか元気に育ってくれますように。


 それだけが、私の願い。

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