魅惑のヴァンパイア
リビングにヴラドの姿が見えなかったので、ベランダを見てみると、案の定夜空を見上げながら煙草を吸っていた。


 人間界で覚えてしまった煙草の味。


 身体に悪いからやめた方がいいよ、とは言ったけど、慣れない人間界で頑張って仕事しているヴラドにとって、煙草はストレス発散になっているのかな? と思ったら、強く止めろとは言えない。


 それに、夜空を見上げて煙草を吸う後ろ姿が、ちょっぴりかっこよく見えちゃうんだ。


 魔界のこと、思い出しているのかな? なんて、哀愁漂う背中を見ながら思ってしまう。


「ヴラド」


ベランダに出てきた私を見て、ヴラドは慌てて煙草の火を消した。


「寒いから来ることないのに」


「ううん、大丈夫。私も夜空見たくなっちゃった」


 ヴラドは小さな声で、「そうか」と言うと、漆黒に輝く夜空を再び見上げた。
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