魅惑のヴァンパイア
「シャオンって名前は、俺しか意味を知らないから役に立ったな。皆が勝手に、ペットだと勘違いしてくれた」


「私もそう思ってた」


 恨めしそうに見つめると、


「まぁ、色々事情があったからな」と言って、頭を優しく撫でてくれた。


 あの当時は辛かったけど、今思い返すと、素敵な思い出になっているから不思議だ。


 オークションで、ヴラドに買ってもらって、私の第二の人生はスタートした。


 ヴラドが隣にいてくれれば、私は何だってできる気がする。


 私の幸せはヴラドなしじゃ考えられない。


 身も心も、私はヴラドのもの……。


「ねぇ、この空は、魔界と繋がっているのかな?」


 永遠に続く、宇宙のような漆黒の夜空。


 まるで、風に揺れるヴラドのマントのよう。


「繋がっているんじゃないか? 世界は広いからな」


 ヴラドも、感慨深げに夜空を見上げている。


息を吐くと、小さな雲ができた。
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