魅惑のヴァンパイア
トントン。


ドアがノックされる音が響く。


「はい?」


「失礼します」


バドが朝食を持ってやってきた。


机に置いて、チラっと私を見ると、驚いた表情をしていた。


「何か?」


バドは視線を私からずらすと、恥ずかしそうに俯いた。


「いや……あの、すみません。一晩で見違えるように美しくなったので。人間の女性は凄いですね。たった一晩で大人になる」


では、と言って、足早に立ち去っていった。


……美しくなった?


私はゆっくりと立ち上がると、化粧台の前へと歩いた。


椅子に座って、化粧台を開けると、大きな鏡が顔を出した。


鏡に映っているのは、紛れもなく私だ。


何がどう変わったというわけではないけれど、確かに一晩で雰囲気が変わったような気がする。


肌の艶も、髪の毛も……。


大人になるとは、こういうことをいうのだろうか。
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