魅惑のヴァンパイア

朝食も、昼食も、一切手をつけなかった。


残された食事を見て、バドはほんの少し顔をしかめた。


けれど何も言わずに、残された食事を持って出て行こうとした。


「あ……あのっ!」


「はい?」


「……お風呂に、入りたいんですけど」


案内された場所に行くと、黒々とした大理石で造られたバスルームがあった。


大きさは大人が5人程入れるくらい広かった。


とても豪華な浴槽の湯船にはバラが浮かんであり、とてもいい香りがした。


……逃げる気にはならなかった。


正確に言うと、逃げる気力すら湧かなかった。


何時間もバラ風呂に浸かっていた。


胸に残された無数のキスマークが、昨日の出来事を思い出させた。
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