魅惑のヴァンパイア
「バド、私には敬語は使わくていいって言ったでしょ」


「申し訳ございませんが、それはできません。わたくしは執事。ご主人様に仕える身でございますから」


バドは椅子を引き、私を座らせる。


「それなら私の方が身分は下でしょ。だって私はペットだもの」


バドは困ったように微笑むと、アンティークカップに紅茶を注いだ。


ジャスミンの、いい匂いがする。


「ペットとはいっても、ご主人様の所有物ですからね」


「変なの。ヴラドはそんなに偉いの? ペットにも敬意を払わなくちゃいけないなんて、どこかの王様みたい」


私の言葉に、バドはふふっと笑った。


テーブルに朝食が並べられたので、話はそこでおしまいになった。


今日の手作りパンは黒糖パンだった。


生地がふんわりしていて、オリーブオイルとよく合う。


私はバドの作った料理が大好きだ。


「ねえ、バド。ヴラドは日中何をしているの?」


「ご主人様は大変忙しい方ですから」


「偉い人なの?」


「ええ、とても」
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