魅惑のヴァンパイア
……その夜。


私はいつも以上にヴラドを待っていた。


風に吹かれて窓硝子が揺れた。


私はハッとして外に目をやる。


ヴラドが帰ってきたのだ。


どうしてかは分からないけれど、ヴラドが帰ってくると冷たい風が吹く。


独特の、渦巻きのような風だ。


私は窓に張り付いて、外を見ると、長いマントを翻しながら颯爽と歩くヴラドの姿があった。


胸がドキドキする。


鼓動が治まらない。


玄関の扉が開く音がして、それから真っ直ぐにこちらに向かってくる。


コツコツと階段を登る音が、私の鼓動を加速させる。


冷たい風が吹き、ドアが開く。


ドアの向こうからは、漆黒のマントに身を包むヴラドが現れる。


とても背が高く、顔は彫刻のように整っている。


そんなヴラドが真っ直ぐに私の元へ歩いてくる。


私は息をするのも忘れるほど、ヴラドの瞳から目が離せない。


マントから長い手が出て、私の頬に指先が触れた。


とても冷たい指だ。
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