魅惑のヴァンパイア
「黙っていたら分からない。ヴァンパイアは心までは読めないんだ」


それは良かったと思った。


心まで読めたら大変なことになる。


私のヴラドへの気持ちがバレてしまう。


「……何もない。大丈夫」


私は必死に言葉を吐き出した。


ドキドキしすぎて、貧血で倒れそうだった。


ヴラドは私の言葉に納得していないようだったけれど、「そうか」と一言いうと、私の顎を指先で上げキスを落とした。


「んっ」


冷たい唇。


強引な口付け。


それでも私は嫌じゃなかった。


むしろ、嬉しかった。


ヴラドからの唇の愛撫に腰がくだけてしまいそうで、私はヴラドのマントにしがみ付いた。


 そんな私を抱きかかえるように、ヴラドは私の腰に手を当てて、倒れ込むようにキスをする。


窓硝子からは、月の明かりが差し込んでいた。


そして私は、今日もヴラドに抱かれる。
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