魅惑のヴァンパイア
太陽が完全に姿を消した頃に出掛けるから用意しとけって言われても……。


何を着ていけばいいのかも分からない。


舞踊会で恥を晒すくらいなら、大人しく家で待っていた方が良かったかもしれない。


そう思い始めた頃、ドアがひとりでに開いた。


冷たい風が髪を揺らす。


「シャオン、出発するぞ」


ヴラドはマントを翻し、ツカツカと部屋に入ってきた。


「待って。まだ支度できてないの」


外を見ると、赤橙色の太陽が西に沈みかけていた。


こんなに早く来るとは思わなかった。


白いワンピースが、いつもよりもみすぼらしく見えて、私は下を向いた。


「分かってる。全て手配済みだ」


「え?」


ヴラドは私の手を取って歩き出した。


私はわけが分からないまま、ヴラドに引っ張られるようにして後ろを歩く。
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