魅惑のヴァンパイア
馬車の窓からほんの少しだけ見える外の世界。


狭い車道に点在する、アクセサリーのように美しい街灯が、中世ヨーロッパの街並みを彷彿させた。


岩のようにゴツゴツした大男や、栄養失調の子供のように細い手足の小人。


見たこともない生き物が普通に生活をしていた。


もう店を閉める時間帯なのにも関わらず、飲食店やブティック店など、次々とシャッターが開いていく。


それに伴って街並みも活気づいているようだった。


その中で、黒みがかったオリーブ色のお店に、ふと目が留まった。


薄気味悪い内臓が入ったガラスの瓶を売っていて、ラベルには『human』と書かれてあった。


それを見た途端、ぞっとした。


どういうことなのか聞きたかったが、真実を聞くのが怖かった。


「もう夜なのに、どうして店を開いているの?」


「我々が活動し出すのは夜からだからな」


「昼間は何をしているの?」


「昼間は寝ているのだろう」


「ヴラドも?」


「俺は殆ど眠らない」
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