魅惑のヴァンパイア
寝ないで大丈夫なのだろうかと思ったけれど、あえて口には出さなかった。


ヴラドの行動に口を出す権利なんて、私にはないからだ。


「あれは……何?」


身体中に傷を負った裸の男が、四つん這いになって歩いていた。


首には鎖が繋がれ、その鎖を持って一緒に歩いているのは踝まで届くマントを羽織ったヴァンパイアだった。


「あれは……ペットだ」


「ペット? もしかしてあの人、人間?」


ヴラドは質問に答えない代わりに、カーテンを閉めた。


きまずい雰囲気が馬車の中を包む。


――もしあの時、ヴラドに買われていなかったら、私もああなっていたかもしれないの? 


それとも、身体をバラバラにされて、内蔵や手足をガラス瓶に入れられて売られていた?


「そんな窓からの景色ばかり見ずに俺を見ろ」


腰をぐいと寄せられて、唇が近付く。


「どうだ、ここで昨日の続きでもするか?」


意地悪そうに微笑むと、長い犬歯が顔を出した。


「やっ! 何言ってるの!?」


顔が真っ赤になってしまう。


すぐ側に、バドがいるのにっ!
< 83 / 431 >

この作品をシェア

pagetop