魅惑のヴァンパイア
「そんな反応をされると、益々そそってしまうな。俺を誘っているのか?」


「なっ!」


唇を塞がれて、言葉を失った。


バドがいるのに……聞かれているかもしれないと思うと、余計に身体が熱くなった。


「その瞳……俺を惑わすイケナイ子だ……」


目に涙をいっぱい溜めて、抵抗できずに見つめると、ヴラドが囁いた。


再び強く、唇を塞がれた。


――ヴラド……。


好き―――


漆黒のマントを強く握った。


ガタンと馬車が動いて、ヴラドの動きがピタリと止んだ。


「到着致しました。ご主人様」


バドの声がした。


ヴラドは何もなかったかのようにドアを開け、外に出た。


外からは、冷たい風が入ってきた。
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