魅惑のヴァンパイア
「……早いな」


「もう少しゆっくり走るべきでしたか?」


「いや……まぁ良い。そんなに時間がないからな」


バドの顔が見れなかった。


ヴラドは全く気にしてないみたいだけど、私は顔が真っ赤になって俯いてしまった。


「シャオン、何をしている。おいで」


優しく手を差し出され、その手を握って馬車を降りた。


ヴラドは、私を隠すようにして、一軒の大きなブティックに入って行った。


閑散とした外とは打って変わって、お店に入ると、まばゆいくらいに明るく豪華な店内だった。


キラキラ輝くシャンデリアに、煌びやかな衣装たち。


ガラスケースには、色とりどりのアクセサリー。


どれもが、華やかに笑って見えた。


「いらっしゃいませ」


腰を深く屈み、高級そうなスーツで身を包んだ女の人が挨拶をした。


女の人が顔を上げると、耳が尖っていて、瞳が猫の目のようだった。


そして、ほんの少し緑がかった顔と、手足。


人間ではないことは明らかだった。


周りを見回すと、数人の従業員らしき人達は皆、顔が動物のようだった。


しかし、後ろ姿は人間と全く変わらず、上品そうな人達ばかりだ。
< 85 / 431 >

この作品をシェア

pagetop