汚いエッセイ
少し歩いて、また振り返った。

そしたらその子もちょうど、俺の方を振り返った。お互い笑って手を振った。

モノクロの景色に、鮮やかな色がついた。まるで水彩画のように、優しく暖かい。

ただ美しかった。
ただ見とれた。


あの子は、また背を向け、歩き始めた。
俺も歩き始めた。


俺はまた振り返った。何度も何度も。振り返った。

またあのマシュマロみたいな笑顔で、笑ってくれるのではないかと。期待した。


何回も何回も振り返ったけど、その子が振り返ることはなかった。


俺は彼女の後ろ姿を、見送りながら、曲がり角を曲がった。
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