捕食者の季節
―バスボートの所有者は

奥村尚人(41歳)
会社員

妻と小学生の子供が二人

趣味のブラックバス釣りのために
正月の休暇を利用して隣県の滋賀まで

自らバスボートを牽引して来た

現在―行方不明


『あの車ですわ』

松下の指差す漁港の駐車場に彼の白い大型四駆が置かれていた。

『本人さんは何かトラブルは―』
と北川が問い掛ける言葉を待たずに

『いや、そのあたりはまだ何とも』
と松下が先じた。

ただワシの考えやけど―
前置きをして

『電話での奥さんの取り乱し方からすると、まあその線はなさそうですわ』

―事件性はなく、純粋な事故だと松下は言う。


無論
北川もそう思う。

ただ一点
―あの奇妙な舟の壊れ方を除いては

そのコトを松下に話すと

『はあ…ワシもなあ、一晩中考えてたんやが』

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