捕食者の季節
2010年2月2日
―航空自衛隊・岐阜基地―


―何処行ってんだ?あいつ
航空自衛隊一佐・加藤忠宏は
携帯を畳んで机上に放り投げた
『しかし、何だって達明がサツカン(警察官)なんかになるかねえ』


北川とは
学生時代、同じ剣道部に所属していた

我ながらおかしいくらい
正反対のタイプだと思う

ただ
どういうわけか二人は気が合った
共に理工学部で
ゼミも同じ


『北川達明』という男を誰よりも
―理解している

と勝手に断言してしまえる
不遜な自分の性格は

―アイツとは確かに正反対だな
と思う


"一佐"というのは
諸外国の軍隊においては一般的に
"大佐"に相当する自衛隊ならではの用語だ


年齢を考えると
加藤は相当に出世が早い方だが

その理由は
警察用語で言えば彼が北川同様に
"シカクシャ"
つまり国家公務員Ⅰ種を取得した
いわゆる『キャリア』であることと無縁ではない。
< 37 / 74 >

この作品をシェア

pagetop