捕食者の季節
何しろ
北琵琶湖あたりは過疎が進んでいて
夏のレジャーシーズンですら人影は少ない
唯一
海津に人が溢れるのは
湖岸の桜並木が一斉に花をつける季節だけだ
そういうわけで
今朝もまた
砂浜に揺れるものは
波打ち際の
白い雑種犬の尾と
そこから離れた
節江のキルティング加工された
灰色のジャンパーしかない
『あら?』
背中を丸めて節江が足を止めた
犬―"マーチ"が
寄せる波を避けながら、しきりに何かに鼻を寄せている
『マーチ』
犬の名前を呼んでみたが
節江に一瞥もくれず
宝物を見つけたように夢中で咥えたり
振り回していた
『しょうがないわねえ』
―また魚の死骸などを口にして下痢などされたら
今まで幾度か
そういったことがあった
節江は再び
『マーチ、あかんよ』
子供に語りかけるような口調で
砂に足を取られないよう小幅に歩を進めながら
背中を丸めて
飼い犬が遊ぶ
波打ち際に歩いていった
北琵琶湖あたりは過疎が進んでいて
夏のレジャーシーズンですら人影は少ない
唯一
海津に人が溢れるのは
湖岸の桜並木が一斉に花をつける季節だけだ
そういうわけで
今朝もまた
砂浜に揺れるものは
波打ち際の
白い雑種犬の尾と
そこから離れた
節江のキルティング加工された
灰色のジャンパーしかない
『あら?』
背中を丸めて節江が足を止めた
犬―"マーチ"が
寄せる波を避けながら、しきりに何かに鼻を寄せている
『マーチ』
犬の名前を呼んでみたが
節江に一瞥もくれず
宝物を見つけたように夢中で咥えたり
振り回していた
『しょうがないわねえ』
―また魚の死骸などを口にして下痢などされたら
今まで幾度か
そういったことがあった
節江は再び
『マーチ、あかんよ』
子供に語りかけるような口調で
砂に足を取られないよう小幅に歩を進めながら
背中を丸めて
飼い犬が遊ぶ
波打ち際に歩いていった