捕食者の季節
突然
足元の砂が黒くなった

波打ち際の湿った砂の色だ


ほっとして
背筋を伸ばして

『マーチ』
声をかけながら目の前の犬を見た


―え? なに?

節江の目に飛び込んだのは
茶色い塊だった

大きさは小振りの座布団くらいの
レジ袋に砂を詰めたような―

『!!』
声にならないような
悲鳴とも
叫び声ともとれない音が
節江の口から漏れた

―あれは指…?

『いやだ』
そう叫んだつもりだったが

やはり声にはならなかった


座布団程の大きさまで
水気をふくんで膨らんだ

手首から先だけしかない
人間の手


にしか見えなかった
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