捕食者の季節
『鑑識係って言うても、モン(指紋)取りばっかりでしたから』

坂本刑事が
顔を歪めながら答える

『そういえば、なんで松さんは鑑識に?』

『分からん』

松下は吸い殻でいっぱいの灰皿に
吸いかけのタバコを強引にねじ込む


その横顔に不満の色があるように思えて
それ以上は触れまい―
と坂本は決めた

しばらく
警察無線のザラついた音だけが車内に響いたが
沈黙を破ったのは意外にも松下だった

『課長の意向やろ』

ポツリと松下の声に坂本刑事が驚いて助手席を見ると

松下は二本目のタバコを口に運んだところだった

その口元が
歪んで吊り上がるいつもの"笑み"だと気付いた坂本は

―松さん、案外鑑識が気に入ってるのかな


そんなふうに思った

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