捕食者の季節
『"これ"ワシが持ってくし、お前は渡辺さん呼んどいてくれ』

署の駐車場に着くや
松下は坂本刑事にそう言った

渡辺検視官(警部補)は
松下よりさらに古参の署員になる

法医学者の肩書きもあり
おそらく県警本部の検死でも勤まるベテランだった


本来ならば
―自分が持ちます―と言わねばならないところだが

腐臭にすっかりまいってしまった
今日程、鑑識係という職務を疎ましいと感じたことはない

坂本刑事は
『助かります』
と即座に松下に感謝して
小走りで署の裏口に向かう


『まったく』
松下は
坂本刑事の背中を見ながら
笑った

―俺は鈍いんだろうか
そんな自問をした
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